求愛
あたしの返事を聞いた春樹は、バイクのエンジンを掛け、それへとまたがった。



「俺多分、姉貴がどこに隠れてようと、ぶっちゃけ雷帝さんより早く見つけ出せる自信だけはあるもんな。」


まるでひとり言のように呟き、彼は小さく笑う。


だからありがと、とあたしは言った。



「まぁ、その性格直さなきゃ、てめぇはいつか振られるだろうけどよ。」


「余計なお世話よ。」


ふたりで笑いながら、もしかしたらあたし達は、いつかの“姉弟”に戻れる日がくるのではないかと思った。


夜の闇の中で、春樹にはフルカスタムされたスティードがよく似合っている。



「確かあと15分以内には電車一本来るはずだから、間違えずにちゃんと乗れよ?」


「あたしそこまで馬鹿じゃないっての。」


2,3回エンジンを吹かした春樹は、



「じゃあな、姉貴。」


「うん。」


そのままバイクは走り去っていく。


あたしはその背中が見えなくなくなるまで目で追っていた。


それから駅構内に入って時刻表を確認すると、偶然にも5分後に到着予定の、地元まで戻れる電車がある。


携帯を取り出し、タカに電話を掛けた。


予想通りというか、やっぱり怒られて、心配されてしまったけれど、でも今日という日を後悔なんてしてないよ。


まだ雨の匂いが残る寂しげなプラットホームで思い出すのは、春樹と過ごした幼い頃のことばかりだった。

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