狼彼女のお気に入り
俺と恵介が出るのはクラス対抗のリレー。
スタートラインに並ぶと、軽い緊張感が漂う。
「翔君っ!恵介君!頑張ってねぇ〜」
向こう側から、優太の大きな声援が聞こえる。
チラッと観客席を見ると、優太が椅子の上に立って手をブンブンと振っているのが見えた。
思わず口元が緩んで笑ってしまう。
「そんなんで一位なんか獲れるのか?」
「当然。お前こそビリになんかなるなよな?」
「フッ、冗談だろ。」
相変わらず余裕たっぷりな笑みの恵介に言い返していると、スターターが脇に立った。
「位置について───」
スターターのピストルが空に向けられる。
俺は深呼吸をして、コースの先を見つめた。
パンッ───!!!
勢いよく走りだす。
並んでいた足は、段々距離が開いていく。
後ろから軽く足音が聞こえるものの、だいぶ距離が開いているようだ。
残り、半分。
コースの曲がり角に達した時だった。
「…っ!」