狼彼女のお気に入り
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「…翔。」
「……すまない。」
恵介の瞳がじっと俺を捕らえる。
きっと何を言っても言い訳になる。
そう思い、俺は謝ることしか出来なかった。
「翔君っ!お疲れ様!恵介君もお疲れ様!」
「…あぁ。」
優太がゴールに走ってくる。
恵介は優太の言葉に答えることなく、代わりに小さなため息をついた。
「…らしくないな、お前が手を抜くなんて。」
「別に…手を抜いたわけじゃない。」
ただ。
ただ本当に自然と、足が止まりそうになっていた。
「まぁ、理由はわかってるから、責めたりはしないけど。」
そう言って、恵介は軽く俺の肩を叩いた。
恵介には、何でもお見通しな気がするな。
少し自重ぎみに微笑んで、俺は校舎に向かって走った。