好きだから。 *短編*


沈黙に耐えきれず私は自ら美咲ちゃんの話題を出した。

「み、美咲ちゃん!宏樹の言う通り本当にかわいい子だね!」


「あぁ…」


何この腑に落ちない返事は…。


「…宏樹?何かあった?」


…返事がない。


「…宏樹?おーい?」


宏樹の顔の前で手を振ると私の手をパッと取られ、


「付き合うの?」

と聞いてきた。


「…え?」


「拓也さんと、付き合うの?ハル。」


「いや、え、分からないよ。」


「…分からない?何で?」

「だって何もまだ考えてないもん…てかだいたい宏樹には関係なっ…」


“宏樹には関係ない”

そう言い切る前に手を引っ張られて私が向かった先は宏樹の胸。


何が起きてるのか分からない。

ただ、抱き締められて嬉しいはずなのになぜだか無性に腹がたつ。


「…宏樹には、宏樹には美咲ちゃんがいるでしょ!?どうしてこんな思わせぶりなことするの!?」


悔しくて怒鳴って、私は部屋を飛び出した。

< 11 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop