好きだから。 *短編*
いつも座っていたイスに座る。
やっぱりここは居心地がいい。
これからは、また前と同じ日常。
私は美咲ちゃんののろけ話を聞いて、宏樹に嫌みを言う。
宏樹を自分の彼氏にしたいなんて欲も出さずに接する。
そんなことを考えていたらガラっとドアが開いた。
「え…」
「ハァ、ハァ…」
「宏樹…」
「ハル、探した…、」
いつかの肉まんの日を思い出すようなこの感じ。
だけどあのときよりもっと汗をかいていて、髪も服もぐちゃぐちゃな宏樹。
「ど、どうしたの?」
「拓也さんに…、もう、返事したの?」
「あ、うん。」
「そっ…か。
…こんなときになんだけど、俺の話聞いてくれる?」
「いいけど、また、のろけ話?」
苦笑いで私は言った。
「違うよ。
美咲とはもう別れたから。」