俺様彼氏と空手彼女2
芦野くんは、その続きを言うことはなかった。
バキッ!
芦野くんの言葉を遮るよう、鈍い音が教室を包み込む。
「…っ」
気がついたら、私は芦野くんを殴り飛ばしていた。
「璃依…。」
私の後ろで、葵の唖然とした声がしたが振り向くことなく床に座り込んだ芦野くんに激しく怒声を浴びせた。
「ふざけるな!空手は、人を傷つけるためにあるんじゃない!アンタが強いからなんだっていうんだ!卑怯な手しか使わないで、それで葵に勝ったといい気になるな、たわけ者が!!」
芦野くんは私に殴られた左頬を押さえ、放心していた。
それに構うことなく葵の腕を掴み、教室を出ようとした、その時だった。
「…お前に、何がわかる。」
今まで呆然としていた芦野くんの声が、深くどす黒い怒りを含めて後ろから突き刺さる。
「…俺の居場所を、何年も何年もかけて築いた居場所をこいつにたった一年で取られた俺の気持ちがお前にわかるのかよっ!」
バンッ!
芦野くんの華奢な腕が、大きな音をたてて壁を殴りつけた。