俺様彼氏と空手彼女2
どこからそんな力が出るんだと、不思議な位強い力に思えた。
白い壁は凹み、亀裂が走っていた。
「俺はな、父親の下でガキの頃からずっと空手ばかりやっていたんだ!遊びたくても遊ばせてもらえずにな!」
ぐっ、と芦野くんの端正な顔が憎しみにきつく歪められた。
「でもそれでも父親に、師範に誉めてほしかった!認めてもらいたかったんだよ!」
えっ…?
父親が、師範…?
葵の方へ目を向ければ、葵も知らなかったらしく目を見開いて固まっていた。
「黒帯になって、道場の仲間には慕われ、やっと師範に認めてもらえると思った。」
「…―――」
「だけどそんな時、こいつが来た。」
芦野くんは氷のような目で葵を睨み付け、葵は僅かに戸惑いの色を見せた。
「最初はずいぶん貧弱そうな奴が来たなと思っていた。だけど、こいつはあっという間に上手くなり、仲間にも慕われて師範にも認められた。」