陰陽(教)師
「やれやれ」

鈴子の耳に、晴明の苦笑が伝わった。

「まずは木下を何とかするのが先のようだな」

そう言うと晴明は眼を閉じ、一呼吸おいてから、次の言葉を紡ぎ出した。

【夜の樹皮の下
そこで眠り 汝は
すべてを取り戻す】

紡ぎ出された言葉に、鈴子は聞き覚えがあった。

「先生、それルーン呪文?」

「さすが魔女だな」

晴明は微笑した。

中世の欧州で現代のような英語やドイツ語が確立される以前の言語を表す文字があった。

それがルーン文字である。

ルーン文字は北欧神話の神・オーディンによって生み出されたものと言われており、1文字ごとに意味がある魔術文字の筆頭とされている。

そのルーン文字によって伝えられたのがルーン呪文だ。

晴明が唱えたのはその内のひとつだった。

「何で先生がルーン呪文を…」

「前にも言ったろ。使えるものは何でも使うのさ」

答えになってない、そう言おうとした鈴子は、自分が穏やかな気持ちになっている事に気付いた。

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