陰陽(教)師
晴明は老婆の遺体が見つかったという部屋の前に立った。

「現在入院中の男女は、この部屋で気を失っていた」

「外よりもすげぇ妖気を感じるぜ」

嵩史はヒゲを震わせた。

「何か聞こえない?」

鈴子が人差し指を口にあてた。

全員が耳を澄ませると

『ひもじい…』

深い穴の底から響くような声が聞こえてきた。

『ひもじい…』

声は目の前の部屋から聞こえてくる。

ごくり、と嵩史の喉が鳴った。

鈴子は大きな瞳をさらに大きくして晴明を見る。

晴明は無言のまま、スーツのポケットから何かを取り出した。

それは黒い布の手袋であった。

指の部分が抜かれ、甲の所には、ネクタイと同じ五芒星が白い線で描かれている。

晴明はその手袋を両手にはめると、部屋の襖に手をかけ、一気に開けた。

そして三人とも、その勢いのまま、部屋に踏み込んだ。

『ひもじい…』

声は続いていた。

それは天井から聞こえてくるようであった。

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