陰陽(教)師
晴明は指を一本たてた。

「なぜ入院中の男女は殺されなかったのか、だ」

老婆の発した言葉

『ひもじい』



『喰わせろ』

この二つから考えれば、老婆が目にした相手を喰い殺そうとしたことは明白だ。

だが実際に、男女は気を失うだけで済んでいる。

「あの老婆には、人に危害を加えるほどの力はなかったのか…」

「でもあいつは先生に襲いかかってきたじゃねぇか」

嵩史は右拳を示した。

「あれはポーズだったのかもな」

「ポーズ?」

「分かりやすく言うと、襲うふりだ」

「なんでンな事を…」

「ねぇ、ちょっと」

嵩史の言葉の途中で、鈴子が部屋を見渡しながら言った。

「この部屋、こんなに広かったっけ?」

見ると、八畳ほどの和室が、倍以上に広がっていた。

「どんどん広がっていくぜ!?」

嵩史が驚く間にも、天井は高くなり、壁は離れてゆく。

まるで、部屋が膨張していくかのようであった。

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