陰陽(教)師
しなやかなその指先にはナイフのような鉤爪が光を放つ。

嵩史は跳躍し、光球を追ってきた塊に向かって鉤爪を振るった。

塊は鉤爪に切り裂かれ、畳の上に落ちた。

それは、つなげれば全長三十センチぐらいの生き物であった。

細長い胴体に透明の羽が生え、針金のように細い足が四本生えている。

見た目は蜻蛉(トンボ)に似ているが、その顎は体の三分の一を占めるほど巨大だ。

もしこの顎で食いつかれたら、ひとたまりもないだろう。

顎と同じく巨大なその目は、不気味な光を放っている。

天井の一画に所々見える光る点は、この生き物たちの目だったのだ。

「こいつは虫怪だな」

晴明が言った。

虫怪とは、低級な小妖怪である。

妖気の強い場所に集まる習性を持つが、普段は目に見えたりするような妖怪ではない。

「虫怪が実体化するほどこの部屋の妖気は強いらしい」

晴明がそう言うと、嵩史がヒゲを震わせながらうなずいた。

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