もう一度、隣に。
「久しぶり。」
そこにいたのは泰ちゃんだった。
高校時代より少し痩せていて、いつもこだわっていた髪型は短くなっていて、服装は相変わらずおしゃれ。
笑った顔は全然変わっていない。
何も言わずただただ見つめるあたしに、泰ちゃんが話す。
「椎香、変わったな。
おねーさんになった。」
「おっおねーさん…?」
困惑気味に聞き返す。
「お、やっとしゃべった。」
笑いながら言った泰ちゃんを見つめながら、彼が目の前にいることがまだ信じられずにいた。
「…泰ちゃんは、元気だった?」
「おう、元気だったよ。
椎香は?」
「あたしは…、」
…言葉に詰まる。
高3の卒業式の日から、後悔ばかりしていて。
体は元気でも、心は、頭は、いつも泰ちゃんでいっぱいだった。
言葉が出ないあたしに、泰ちゃんが「ん?」と首をかしげる。
「あたしも、元気だったよ!
お店入ったら?みんな待ってるよ!
あたしもう少ししたら行くし!」
今のあたしにはこれしか言えない。
泰ちゃんは「そっか」とだけ言い残し、お店に入っていった。