もう一度、隣に。
高3の秋、この頃からあたしと泰ちゃんはぎくしゃくし始めた。
2学期早々に進路が決まっていたあたしと、一般で大学を受ける泰ちゃん。
あたしはそんな泰ちゃんを気遣って、邪魔にならないようにできるだけ距離をとっていた。
でも、泰ちゃんは違った。
“椎香最近俺のこと避けてない?”
突然泰ちゃんからきたメール。
“そんなことないよ?ただ、泰ちゃんの邪魔したくなかったから。”
あたしはすぐに返事をした。
それ以降、泰ちゃんからメールはなくて、学校に行っても全然話も出来なかった。
そんな日々が続いていたある日、運悪く、あたしは泰ちゃんが後輩の女の子に告白されているのを見かけてしまった。
バレないように隠れていたけど声が聞こえてくる。
「泰介先輩は、まだ長瀬先輩と付き合ってるんですか?」
「…あぁ、いや。分かんない。」
泰ちゃんのその答えにびっくりしたあたし。
あたしたち付き合ってなかったの?
それだけが頭をかけめぐる。
その後輩の告白は断っていたけど、ショックが大きすぎてあたしはその場から動けずにいた。
足音が近づいてきて、顔を上にあげると泰ちゃんと目があった。
「し、椎香?」
「…ごめん、聞いちゃった。ごめんね、別れよう。」
あたしの目からは涙が止まらなくてあわててその場から走り去った。