もう一度、隣に。
「ハァ、ハァ…」
20歳を越えてからはじめての全力疾走はかなりきつかった。
泰ちゃんが今住んでるところは陽太がこの間教えてくれた。
息を切らし、泰ちゃんのアパートの下で心の準備をしていると、前から人が歩いてきた。
夜も21時を回っていて、暗くて誰だか分からなかったけど、街灯の下にさしかかったときに見えた。
泰ちゃんと、女の子。
泰ちゃんは手に買い物袋を持っていて、横にいる女の子と笑いながら歩いている。
胸がズキズキ痛むのは走ってきたせいだと心の中で唱えた。
早く走って逃げればいいものを、あたしはその場から1歩も動けないでいる。
先にあたしに気づいたのは隣の女の子。
そのすぐあとにあたしと泰ちゃんの目が合った。