王子様じゃナイト!
「じゃあ行くぞ…っ!」

「わっ、わわっ?!」

急発進した自転車は徐々にスピードを増していく。
肌寒い風が鼻先を通り、まわりの風景がどんどん過ぎていく。

「…き、気持ちいいかも……」

「だろ?だから禁止されててもチャリ通やめられねぇんだよな…」

「……え、禁止されてるの?」

「あぁ。でも別にいいだろ?」

「いくない!!」

これじゃあわたしまで校則違反したことになっちゃうじゃん!?


「わ、わたし降りるっ!」

「転がり落ちたいんなら手ぇ離せ」

「そ、それは嫌だけど…きゃっ!」

凌也は急カーブを乱雑に曲がる。
わたしはあまりの怖さにしがみついてしまった。

「…あ、ごめん…苦しかったでしょ?」

「………」

凌也は口を閉ざしたまま自転車を漕ぎ続ける。


と、前方に我が家が見えた。



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