秘密
 

SIDE.今野珠子
 



 
悠平が休んだのはあの一日だけで、それからは変わらず学校へ登校している。
何故休んだのか、連絡を寄越さなかったかということを、珠子は聞いていない。何となく、聞かない方が良いように思ったのだ。
 

 
「今日も暑いなあ……。でも明日で学校も終わりだね」
 

「早く夏休みにならないかな」
 

「明日までの我慢だよ」
 

 
教室の中ではそんな内容の会話が飛び交っている。夏休みはどこへ行くとか、何をしたいとか、生徒達は酷く気分が良い。
冷房の利いた教室はとても居心地が良く、移動教室や体育は恨めしい。
 

悠平はどこか清々しく、何かが吹っ切れたような面持ちをしている。
 

 
「夏休みにさ、」
 

「うん」
 

 
昼食中、いつものように悠平は珠子の弁当を食べている。
 

 
「……結婚式が、あったら、タマも一緒に来てくれる?」
 

「……は?」
 

 
悠平は俯いたまま弁当を眺めている。珠子はあまりの驚きに、間抜けな声を出してしまった。
意外というよりも、信じられない気持ちが強く、悠平の考えていることが解らなかった。
 

 
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