秘密
SIDE.雨宮好美
「先生」
「何?」
神妙な表情で一人の女生徒が、授業を終えたばかりの好美に近寄った。
その女生徒は、ちらりと好美の腹を見た。あ、と好美は声が出そうになった。
「先生、お腹……、もしかして」
「……解っちゃった?」
あまりにもその女生徒が申し訳なさそうに眉をひそめるので、そうさせている好美自身が申し訳なくなった。
「夏休みいっぱいで、この学校をやめるの。戻ってくるかは解らないわ」
「……結婚、していたの?」
「ううん、まだこれから」
「……そうなんだ」
寂しそうに、女生徒が俯く。
好美はこんな時に、教師をしていて良かったと思ってしまう。
「……しあわせ?」
女生徒が好美を見上げて尋ねた。好美は意地悪そうに笑って、もちろん、と答えた。