秘密
SIDE.今野珠子
まだグラスには、半分もそれ以上も麦茶が入っている。氷は疾うに溶けた。
「タマ」
「……」
「……何か、言って」
悠平は、布団に顔を埋めたままだった。
そんな悠平に珠子はかける言葉がなく、黙ったまま、テーブルの上にある汗をかいたグラスを見ていた。
「あたし、何を言えば良いのか解らない……。何て言えば良い?どうしたら良い?」
珠子は俯いたまま悠平に問い掛けた。悠平は、布団に顔を埋めたままでいる。
「……。それじゃあ、先生がいなくなってから暫くの間も、俺といて」
「一緒に、いれば良いの?」
悠平は布団に顔を埋めたまま。
「……ん、それだけで充分」
悠平は顔を上げると、俯いたままの珠子に手を伸ばした。グラリと珠子の体が傾いて、それはそのまま悠平の胸に倒れた。
あたしを、好きになれば良いのに。
珠子が本気でそう思ったのは、これが初めてだった。