秘密
SIDE.今野珠子
避暑のために非常階段にはわざわざ行かないようにしていたのに、悠平が珠子を誘導した先は非常階段だった。
珠子は何が何だか解らないまま、前を行く悠平について行った。
「……門田君?」
「……タマ」
非常階段に到着してから、悠平はようやく話し始めた。
「どうしたの……」
「……、いや、何でもないんだけどさ」
「……」
どこか様子の違う悠平に、珠子は眉をひそめた。悠平は目を合わせようともしない。
しかしちら、と目が合った瞬間、珠子の体は悠平の部屋でのあの時と同様、悠平に引き寄せられていた。
鼓動が大き過ぎて、悠平の声を聞き逃してしまいそうだ。
「ごめん、ちょっとこうしたかった」
「……」
暑くて適わないというのに、珠子は文句も言わず悠平に身を任せていた。
今、情緒不安定な悠平が求めるのは、好美ではなく自分なのだ。
そう思うと、珠子は放っておけない悠平に頬を擦り寄せずにはいられなかったのだ。