秘密
SIDE.雨宮好美
好美は初めて悠平を見た時、自身が教師である立場を忘れるほど、胸が高鳴ったことを未だに覚えている。
面白い髪の色ね。
私が嫌なら茶色にする?
ううん。
その色が、一番イイわよ。
好美は悠平の笑った顔が好きだった。
それは少し無愛想な悠平が、年相応に見える瞬間。好きだった。
「先生、こっち向いてよ」
「……」
こんなつもりじゃなかった。
本当は、マリッジブルーになっているつもりはなかったし、門田君に恋をするなんて思いもしなかった。
自制心はこんなにも脆いことを、私はようやく知った。
夫となる聡は、もちろん愛している。
悠平とは恋をしているのだ。
珠子に警告として言いながら自身にも言い聞かせていたあれは、本当に正しかったのだろうか。
分からない。
「先生が俺の言うことを聞かないなんて、珍しいな」
黙ったままの好美に閉口した悠平が、そう言っておかしそうに笑っている。
まるで私が子どものよう。
そう思うと恥ずかしくなった。