秘密
 

SIDE.雨宮好美
 



 
「私は、門田君が好きだわ」
 

 
何と往生際の悪い女だ。
自分を慕う悠平の傷を抉ろうとしている。自惚れている自分が気持ち悪い。
 

 
「先生、」
 

「でも、あの人も大事だわ」
 

「……解ってるよ」
 

「どうして解るの!?私のこと、もうどうでもいいの!?」
 

「……違うけど」
 

「どうでもいいんでしょう、もう、こんなフラフラしている女、飽きたでしょう?」
 

 
好美は泣き出してしまった。
涙で悠平がどんな表情をしているか、完全に見えなくなった。
 

 
「もうはっきりと飽きたって言えば良いじゃない!」
 

「……そうだな、飽きたのかもしれない」
 

「っ……」
 

 
その言葉は好美が言わせたようなものの、思いの外、好美の心を砕くようだった。
暫く沈黙が続いた末、嗚咽を漏らす好美を悠平が静かに抱き寄せた。
 

 
「先生、最後だよ。もう、二人きりでは会わない。校内に居ると廊下で出くわすこともあるだろうけど、もう、会わない」
 

 
悠平の声が、体に染み入るようだった。
 

 
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