電話越しの君へ


ほんの少し、照れ臭い。
まさか自分からこんな面倒臭いことを提案してるなんて。



「見ててやるから勉強しろよ。分かんないとこも教えるから」



真剣に言ったのに綾瀬は
まだ呆然としたまま「なんで?」なんて聞いてくる。




………。
恥ずいんだから言わせんなよ。



「頑張ってほしいんだよ」



綾瀬から視線を外して、出来るだけそれとなく言う。



ほんの少し泣きそうな顔をした綾瀬を、俺は見て見ぬフリをした。



***



1時間も経つと、さすがにヘタってくんのかと思いきや、意外にも綾瀬は頑張っていた。



たまに俺に質問しては一生懸命、物理を解いてる。



――そんな一生懸命な綾瀬、好きだよ。



電話で言えても、面と向かってはさすがに言えるはずもなく。



静かに綾瀬を見て俺は微笑んだ。



< 78 / 98 >

この作品をシェア

pagetop