電話越しの君へ
なのに俺は気付かずまくし立てる。
「取りあえず、今月中には」
長い沈黙の後、綾瀬はいう。
『…そっか、頑張れ』
なんの感情も読み取れない言葉に俺は少し不満に思う。
俺は忘れていた。
俺が綾瀬を好きなことを、ほかでもない綾瀬が知らないこと。
「なんだよ、素っ気ない―…
………綾瀬?」
反応がない。
もう一度名前を呼ぼうとしたとき、
『……っ
あ、なんかお母さん呼んでる!!
ごめん切る!!じゃあね!!』
いきなり勢い良く言ったかと思うと、その勢いのまま電話が切れた。
「おい、綾瀬!?」
そこには無機質な電子音が響いているだけだった。