空白の時間=友情>愛情

失踪

海水浴場を後にして、オレたちは駅前で別れた。

そのままオレは塾の自習室に立ち寄り、自宅に戻った。



午後11時を過ぎた頃、母親が部屋の扉を激しくノックして言った。

「賢二くんのお宅から電話があって、賢二くんがまだ家に戻ってないらしいのよ。直紀、何か知らない?」



オレはすぐさま賢二の携帯にダイヤルした。

―ただいま電波の届かない場所にいらっしゃるか、電源が入っていないためかかりません―。

メールを送っても返信はない―。



オレは、ハート型の貝殻を強く握りしめた。



何かの事件に巻き込まれたかも知れないと、その夜のうちに捜索願いが出され、翌日から大騒ぎになった。

オレも警察で事情聴取を受けたり、学校に呼び出されたり…あわただしく2週間が過ぎたが、依然として賢二の行方はわからないままだった。



賢二は消えた―。



ハート型の貝殻だけを残して―。
< 11 / 65 >

この作品をシェア

pagetop