空白の時間=友情>愛情

幻影

夜風に吹かれながら、その日は歩いて家路についた。

翼は賢二が生きている―と言う。

あの子は何か失踪の秘密を知っているのか?

賢二はどこかで元気に暮らしているのか…。

生きているなら、また会いたい…。



祝電の一件以来、封印してきた賢二への思いがよみがえった。

翼の担任になってからは、ますます賢二のことが頭から離れない…。

どうしても翼に賢二の姿を重ねてしまう…。



「ただいま」

「お帰りなさい」

「私も今、帰ってきたところなの…すぐ夕飯の支度するわね」

「あぁ、ゆっくりでいいよ」

「じゃあ、お風呂に入ってビールでも飲んでて!」

「わかった!」

香織も歯科衛生士として働いており、新婚生活というよりは同棲を始めた感覚に近い。



オレは湯船に身体を沈め、また賢二のことをぼんやり考えていた。



「直紀さん…寝てるの?ねぇ、ゴールデンウィークにどこ行くか…考えた?」

バスルームの外で香織が大きな声で尋ね、オレは我にかえった。
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