空白の時間=友情>愛情

川面

川面を見つめ、賢二は話し出した。

「今のオレは別人として生きている。広沢賢二は12年前に死んだよ。法律的にも家庭裁判所の審判で失踪宣告が確定している…」

「隆一さんは本人が出てきたら、失踪宣告は取り消されると言っていたが…」

「本人は一生、名乗り出ないよ」



沈黙が続き、賢二が口を開いた。



「広田先生とナオに一つずつお願いがある…」

「何だ?」

「広田先生には翼に会わせて欲しい。ナオにはキスして欲しい…」

「キスは人目のないところなら…。翼は今、部活中じゃないかな?」

「学校の体育館か?」

「今から行くか?」

「そうしよう」



ふたりは肩を並べて、土手の方向に歩き出した―。
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