俺だけのお姫様

「いってらっしゃーい」

いってきまーす、と元気に手を振るのは、もちろん渚だ。
あまり大きく振られると自転車が揺れるので、止めていただきたい。

だけどその無邪気さが可愛くて、どうしても、やめろの一言が言えなかった。

二人を乗せた自転車が、学校前の下り坂に入る。

「わあ、速ーい!」

遅刻の焦りも無く、渚は加速する自転車に興奮ぎみだ。

俺の腰に手を回して、背中にギュッと体をくっつけている。

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