短編■ ピアスを外して、声で飾って
そっと外してくれた彼は、丁寧に、そして大事にピアスを机に置いてくれた。
ピアノを弾くような手つきを、ただ眺めていた。
慣れは怖い。
多分、いつか怖くなくなってしまうのだろう。
そんな風になることが怖かった。
いつの日か、自分でピアスを外すようになるのかもしれない。
彼はピアスなんて雑に扱うかもしれない。
ううん、外してくれなくなるかもしれない。
そんな日が怖かった。
ずっとずっと今みたいで居たくて――