風に揺蕩う物語
リオナスの言葉を受けたギルバートは、抑揚に頷いてみせると、快く承諾していた。リオナスはその言葉を受け、少し安心した様子を見せると、ヒューゴに視線を送りすぐ隣のシャロンにも視線を送る。

ヒューゴが女性を連れて公の場に居る事を怪訝に思ったリオナスは、自分の感じた疑問を素直にヒューゴにぶつける。

「兄上。この姫君は兄上の良き御方なのですか?」

リオナスの言葉にヒューゴはもちろんシャロンも、驚きを隠せない表情で互いの顔を見つめ合う。その様子をさらに怪訝に思ったリオナスだったが、すぐに自分の過ちに気付くと心底驚いた表情を浮かべる…。

「まさか…シャロンなのか?」

「左様でございますリオナス様。ヒューゴ様が私をこの式典にお誘い下さいまして、恐れ多いとは感じましたが、ヒューゴ様の優しさに甘えてしまいました…」

深く頭を下げながらそう話すシャロンを唖然として見つめ続けるリオナス。そしてヒューゴはと言うと、そんなリオナスの様子に無理もないといった表情を浮かべつつ、少しからかってみせる。

「簡潔に話せば、無理やり僕がシャロンを連れてきただけなんだけどね。それはそうとリオナス。シャロンの顔を忘れるとはあまり穏やかじゃないな…」

「…反論のしようがないですね。すまないシャロン。あまりにも綺麗に着飾っていたので、初見では気付かなかった」

「そんな事はございませんリオナス様。私が身分を顧みずこの様なお姿をお見せしている事こそが恥でございます…」

凛々しい姿を崩さないシャロンだが、心底そう思っているのか、神妙な顔つきで謝罪の言葉を述べる。

「あまり自分を卑下する様な言葉を言うものではないぞシャロン。ドレスも御髪も良く似合っている。それにせっかくこの様な式典に来たのだから、今日ぐらいは自分に自信を持って堂々としていろ。その方が今のシャロンには良く似合っている」

「リオナス殿の言うとおりだな。今日はヒューゴ殿の姫君として立振舞う事が誠なり。その方がヒューゴ殿の格式も上がるというものだ」

リオナスの言葉に同意を示したギルバートは、腕や肩を回しながらそう話す。
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