ある17歳における不明瞭な愛についての考察
「帰ろ。数学とかもういい」
言葉と共に、あたしは机の上の参考書を閉じた。空気を含んだ紙の層が、ぱたん!と軽快な音をたてる。
有斗が消してしまったペンギンくんの跡を、あたしは指でそっとなぞって、まとめてカバンにしまった。
「俺んちでゲームする?」
有斗は少ない荷物を手早く片付けて、もうカバンを肩にかけて立ち上がっている。
「するっ!」
あたしが返して、有斗が短い返事でこたえる。
窓の戸締まりを確認しながら、あたしはこっそり窓ガラスの中の有斗を探した。
さっきまで触れていた右手をぼんやりと眺める有斗の姿に、あたしの左手も熱を帯びたような気がした。