駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

山南亡き後、慌ただしく葬儀を済ませた新撰組は、あっという間に三月を迎え、以前から話題に上がっていた屯所移転に向けてバタバタと騒々しい毎日を送っていた。


「土方さんも、もっと早く言ってくれればいいものを、今日になって "明日、屯所を移転する" だもんなぁ…」


三月に入った辺りから、少しずつ準備はしていたものの、通常の任務もあるので引っ越し準備は楽に進んでいなかった。

そんな中、何を思い立ったのか土方は朝の会合で、突然明日の移転を発表したのだから大慌てである。



「みんなバタバタですね? 部屋の片付けは、だいたい終わりましたよ」


矢央は、疲れたと身体を横たわらせる三人にお茶を差し出した。


「そりゃそうさ。 世話になってんだから荷造りだけして、はいさよならって訳にはいかねぇからな。 使わせてもらった場所は、きちんと片付けて礼はしねぇとな」

「だからこそ、明日って突然言われて困ってんだけどね〜。 んで、当の本人は何をしてんのさ?」

疲れた身体には甘味が一番。

藤堂はお茶請けにと出された饅頭に手を伸ばしたが、もう少しのところでパチンと手を叩かれてしまう。



「平助さん! 寝転んで食べるなんて行儀が悪い!」

「だはははっ! 平助、お前、ガキみてぇに叱られてんじゃねぇよ!」

「…うっさいなぁ」


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