駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
悪意を込めて睨むが、能天気な原田は気付かず変わりにあることを提案しだす。
面白いことを思い付いたと、幼子のようにキラッと歯を見せ笑みを浮かべた原田。
「そうだ、矢央は身体を動かすために来たんだろ? なら丁度良い、熊木と試合をしてみろよ」
「「は?」」
声をハモらせたのは、矢央と藤堂である。
熊木は目を見開き原田を振り返ると 「本気ですか?」 と、首を傾げてみせた。
そしていつの間にか、他にも沢山いた隊士達の姿がなくなっていたことに気付き、どうやら稽古時間はとっくに終わっていたようだ。
「本気も何も、矢央も一応新撰組隊士だ。 それなりに腕に覚えがあるから、土方さんも隊士にしたんだぜ」
「でも、私は剣術はまったく出来ないですけど」
「体術は出来るだろ? 熊木、剣術以外を扱う奴と戦ってみんのも稽古になる。 どうだ、やってみるか?」
一応強制ではない。 原田を見つめる視線が、一度床に向きそのあと矢央を見据えた。
きょとんとした矢央は、熊木と視線を合わせ苦笑いを見せるが、熊木は何故か僅かに口角を吊り上げた。
「!?」
え(?) と、戸惑いを感じたのは、ほんの一瞬。
「此方は良いですよ。 間島さんさえ宜しければ」
「………」
「じゃあ、決まりだな! ほら、矢央ボサッとしてねぇで準備しやがれ!」
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