駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
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蝉の鳴き声に夏を感じ初めた。
昼間は気温が上がり、暑さに弱い矢央はバテ気味だが、夜になると六月はまだ少しひんやりしだすので幾分か過ごしやすい。
「矢央、怪我は大丈夫なのか?」
散歩で手土産に買ってきた団子を皆で食べていると、熊木との騒ぎを原田から聞いた永倉が尋ねる。
痛むのか、矢央はぎこにない動きだ。
「ん。 全治二週間らしいです。 今日の今日なんで、さすがにまだ痛みますね」
苦笑いを浮かべながら、痛みのある肩をそっと撫でた。
他人の傷なら直ぐに治せるのに、己の傷は治せない。
いくら人並外れた能力を持っていても、最近では滅多に役立つ機会はなかったが、それはそれで良いことだろう。
「間島の柔術は優しすぎる」
「お、斎藤、急にどうしたよ?」
黙々と団子を食べていた斎藤は、お茶を啜り湯飲みを置くと、隣に座る矢央を見下ろした。
きょとんと斎藤を見上げる矢央に、斎藤は無表情で言う。
「確かに腕はたつだろう。 己の危機を回避するだけならば、お主の能力ならば可能だ。
だがしかし、それに攻撃を加えるとなると、お主は優しすぎる。 気持ちが既に弱気では、男相手に剣を相手に勝てるわけがない」
「……確かにな。 矢央の回避力には驚かされるが、攻撃は先が読めちまう」
欠点をつかれてしまい、顔を俯かせる。
それは自身が気付いていた欠点、弱点なのだ。
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