駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

そんな馬鹿な、と驚愕の表情。
沖田ならともかく、新入りの隊士の気配を読めなかったのか――。


「土方さんも警戒を強めるようにと。 山崎さん、あまり気になさらないことです。 新入りと言えど腕がたつ者はいますからね」

「は、はあ…」


愕然とする山崎。

矢央は、落ち込む山崎に声のかけ方が分からず困ってしまう。


「そうだ、矢央さん。 少し私と散歩にでも行きましょうか」

「え? えっと……」


山崎に外出しても良いものか確認したいが、遠慮がちに視線を送ると、

「行ってもええ。 しかし沖田さん、あなたはくれぐれも無理をなさらぬように」

と、直ぐに許可をくれた。 釘をさすのは忘れずに。


「はい。 少し散歩したら帰りますよ。 では行きましょうか」

「あ、はい! じゃあ、また来ますね?」

「ああ、気ぃつけや」


やはりショックが隠しきれないのか、きっと暫く落ち込むのだろう。

そんな山崎を気にかけながら廊下を歩いていると、沖田は言う。


「大丈夫。 彼も疲れているだけです。 土産に団子を買って帰りましょうね」


他人の心配をしている場合ではない沖田なのに、まるで己は病気になどかかっていないかのように爽やかに微笑む。

その沖田の笑顔には、不思議と癒し効果があった。


「そうですね。 土方さんや近藤さん、皆にも買って帰ろ!」

「ふふ、甘味は元気の源ですからねぇ」

「はい!」


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