駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

「俺のせいか?」


高く結われた黒髪が音を立て肩から流れ落ちた。

口から吐かれる息を、どこまでも白く上がって行く。



「…貴方は、正しいでしょう。 新撰組のことを、いつも想っての行動だ」

「………」

「しかし、私は耐えらそうにもないんだよ。 土方君、私はどうしたらいいんだろうか」


眉を寄せ悲痛に歪む両者の顔。




山南が去っても土方は暫く雪の中に佇んでいた。


いつからだ。

一体いつから、山南はあんな顔をするようになった。

共に夢を追いかけた時の山南はキラキラと輝いていたのだ。

しかし………


「クソッ…」



いつから、あのような死人のような灰色の瞳を見せるようになったというのか………。


変わったのは周りか、それとも己自身なのか土方は分からなくてもがき苦しむ。

だが進むしかない、後にはもう引き返せない。


「山南さん、頼むぜ……」


奥歯を噛み締めながら土方は願う。

頼むから、頼むから、頼むから。

それだけは止めてくれ、と――。



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