Voice

決意を固めて、

行こうとすると、

梓が止めた。








「おい、待てよ!」






手を握られると、

その温かさに驚いた。






…気付かなかった。

私の手こんなに冷えてたんだ。







「こんな手でピアノ弾けるのかよ。

…ったく。そっちの手も貸せよ。」






えっ!?




抵抗する暇も無く、

あっという間に

両方の手を掴まれて…。






あ…。






「…走ってくるのは、

勝手だが、上着くらい着て来い。



…こんな手を冷やしたら、

ピアノ弾けないだろ。


…馬鹿。」





言ってる事はあってるけど、

馬鹿は余計!




ホントに梓って、ムカつく。






「…知ってるわよ!

悪かったわね!


馬鹿で!


私だって、

間に合う為に必死だったんだから!」







ホント、

一言余計なんだから。




嫌な奴!




だけど、



悔しい位に

…温かい。





遠夜も、

こうやって手を握ってくれたけど、





さっきよりも、

暖かい気がする。








…きっと、

さっきより

身体が冷えてたからだよね。





そうだよね。






「靴ずれは平気なのか?



この間みたいに

突然、脱ぐなよ?」







「わ、分かってるわよ!!」






ふん!と、

顔を背けると…。









「…ふっ…。」





梓が

笑い出した気配を感じて。





「何よ!!」

と、振り向いた時。











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