不器用な僕たち
涼ちゃん……。
涙がこぼれた。
やっぱり、あの時の涼ちゃんの声は本物だったんだ。
コンサートで忙しいのに、わざわざ駆けつけてくれた。
嬉しいけど……。
私……迷惑かけてしまった。
「そろそろ着く頃かな」
しばらくして、お母さんが布団から起き上がる。
涼ちゃんが来るのだと、次第に胸がドキドキする。
「今の時間は身内しか出入りできないから、涼ちゃんはあんたのお兄ちゃんってことにしているからね」
「お母さん……」
お母さんに、涼ちゃんを好きだと言ったことはないけれど、やっぱり母親だな。
私の気持ち、お見通しなんだ。
そうでないと、ここまで用意周到に私と涼ちゃんを会わせてなんてくれない。