不器用な僕たち

涼ちゃん……。


涙がこぼれた。

やっぱり、あの時の涼ちゃんの声は本物だったんだ。

コンサートで忙しいのに、わざわざ駆けつけてくれた。


嬉しいけど……。

私……迷惑かけてしまった。



「そろそろ着く頃かな」


しばらくして、お母さんが布団から起き上がる。

涼ちゃんが来るのだと、次第に胸がドキドキする。


「今の時間は身内しか出入りできないから、涼ちゃんはあんたのお兄ちゃんってことにしているからね」

「お母さん……」


お母さんに、涼ちゃんを好きだと言ったことはないけれど、やっぱり母親だな。

私の気持ち、お見通しなんだ。

そうでないと、ここまで用意周到に私と涼ちゃんを会わせてなんてくれない。


< 100 / 162 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop