不器用な僕たち
過去のことに浸って、そのまま眠ってしまったのか。
何かが窓を叩く音で目が覚める。
時計を見ると、すっかり日付が変わってしまっていた。
「あ……、雅人、置いて来たんだった」
ライブ会場に置き去りにされた雅人。
きっと雅人が、文句でも言いに来たんだろうな。
覚悟してカーテンを開けた私の目に映ったのは、雅人じゃなく、さっきまで大勢の観客の前で唄っていた涼ちゃんだった。
なんで、涼ちゃんが……。
震える手で、窓をゆっくりと開ける。
「久しぶり」
涼ちゃんは昔と変わらない、優しい笑顔で私を見る。
その笑顔を見たら泣きそうになってしまって、私は咄嗟に俯いた。
「永久就職の件、承諾してくれてありがとう」