不器用な僕たち
「何がおかしいのよ」
人の顔見て笑うなんて、とんでもなく失礼なヤツだ。
私が思い切り睨みつけても、雅人は怯むことなく笑い続ける。
「俺さ、昨日一瞬だけ、お前の顔見てドキッてしたんだよ」
「……はあ?」
「これは恋かもしれねぇ!って思ったけど。今お前の顔見ても何も感じないってことは昨日のドキッ!は、ただの動悸だったんだなって」
「……バカじゃないの、あんた」
呆れる。
平然とした顔で『恋かもしれないと思った』って言われると、意識するどころか逆に殴りたくなってくる。
でも、爽やかな朝。私は雅人を殴ろうとする拳を懸命に抑えた。
「あぁ、そうそう。今日ちょっと話あるから、学校終わったらお前んちに行ってもいい?」
「えっ?何の話?」
「愛の告白じゃないことは確かだ」
「……あんた、マジでウザイ」
雅人は「お前よりマシ!」と言うと、私を置いて先に校舎の中に走って行った。