不器用な僕たち

「おっ!有名人の弟!」


教室に入ると、クラスのみんなが雅人目がけて駆け寄ってくる。

雅人は「鬱陶しい!」と言わんばかりに顔を歪ませ、私は何が起きているのか全く分からなかった。


「お前の兄ちゃん、デビューするってマジ?」

「ベルマリのサイン貰ってきてよ!」


なに?デビューって。

私、何も聞いてない。

雅人を取り囲む輪から少し離れたところで、私は呆然となった。


「千亜紀!」

「あ、おはよう。久実ちゃん」


呆然としている私に、親友の久実ちゃんが心配そうな顔をして駆け寄ってきた。


「涼さん、デビューするって……」

「……私、何も聞いてない」


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