不器用な僕たち
「え、そうなの?ベルマリの追っかけの子の情報なんだけど、デモテープを『アトラス』に送って、かなりの好感触だったんでしょ?」
アトラスは、業界最大手の音楽事務所。
涼ちゃんたちがデモテープを送ったことも知らなかった。
それどころか、涼ちゃんたちが本気でプロを目指していたことさえも知らなかった。
「浩平さんとアトラスの社長が会っているのを見たって子もいるのよ」
浩平くんはベルマリのギターをやっていて、リーダーでもあり、涼ちゃんの親友でもある。
小さい頃、私は浩平くんに凄くかわいがられていた記憶があった。
「……千亜紀……。いいの?このままで」
「……えっ?」
「涼さん、どんどん遠い人になっちゃうよ?」
遠い人……。
いつも一緒にいた涼ちゃんが、遠い世界にいってしまう。