不器用な僕たち
「……帰ってから話すつもりだったのに、先にバレたな」
「話って、涼ちゃんのこと?」
「あぁ」
資料室で地図をすぐに見つけたけれど、私と雅人はすぐに教室には戻らず、少し話をした。
「昨日の夜、浩平くんが来てさ。兄貴たちが送ったデモテープがかなり良かったみたいで、デビューの話がきたんだよ」
「……いつデビューするの?」
「すぐってわけじゃねぇよ。まだまだ先。契約とかレコーディングとか、いろいろあるしな」
「……涼ちゃん、東京に行くの?」
「うん」
気を遣うこともせず、雅人はきっぱりと頷く。
ずっとお隣だった涼ちゃん。ずっと一緒だった涼ちゃん。
いつかは離れる時が来るって分かっていたけれど、こんなに遠い存在になってしまうなんて……――。