子うさぎのお世話
バージンロードを微かに目元を赤くした父にエスコートされ……
ゆっくりと進む。



歩む先には目を細め雪兎を見つめる時春が、優しく微笑んで待っていた。



ほぼ身内だけで執り行われた結婚式の参列者達は
あまりに美しい新郎新婦に目を奪われた。



雪兎の手は、父から時春に渡され………



雪兎は時春と共に微笑みあった。







「……その健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲しみの時も、富める時も貧しい時も、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け…その命有る限り真心と誠実を誓いますか?」


静まり返った教会に神父の厳かな声が響いた。


「誓います」


時春ははっきりと誓いの言葉を口にした。


「誓います…」


雪兎の声は緊張に少し震えていた。


「では、指輪の交換を……」


まずは時春が指輪を受け取り、シンプルなシルバーのエンゲージリングが雪兎の細い指にはまった。


次に雪兎が震える手で慎重に時春の指に指輪をはめる。


そして二人で結婚証明書にサインをした。


「……誓いのキスを」


―――ついにきちゃったっ!


雪兎の心臓はさっきからバクバクいいっぱなしなのに…その言葉にさらに跳ね上がる。


雪兎が焦っている間にも、時春は彼女のベールをソッとあげた…。


「……うさ…」


優しくて幸せそうな時春の微笑みに雪兎は自然と目を閉じて、
彼のキスを受け入れていた………。



「…………!!」


目を開けると……


時春の瞳から……


涙が一筋……スゥ…と流れた。


その美しさに目を奪われた。






それは……雪兎が初めて見た


時春の涙だった――――――……



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