月と太陽
リリはヘッドフォンをして左耳には別のイヤホンを入れモニターとチャンネルの沢山ある機材の前に座り、目の前にあるマイクに向かって「感度は良好かしら?」と言った。
萌乃はレザーの手袋をして梯子を抱えて歩きながら「下ネタ禁止。」と言い、可那は運転席から這い出ながら「しっかり憶えて…なさい…」と、それ以上低くはならないだろうという声で言った。
七階建てのマンションの垣根をくぐり、「201ってこの上だよね?」と可那に確認をすると、可那は黙って頷いた。
3mほどの梯子が伸びてベランダの右横に立て掛けられる。 萌乃はその梯子をほぼ音もなくスタスタと一瞬で頂点まで登ると、「どの辺?」とピンマイクに小声で言った。
「えーと、右に18cm、うん、そうそうあと少し、…そこ!
で、そこから上に、そこ!
うん、おっけぃ。」
リリは左手でモニターを操作しながら右手は何かをチューニングしながらマイクで萌乃に指示をした。