響け、空に―
「平気だよ。」
入江君は優しい。
そういうところに惹かれている自分を、無視できないほど、この気持ちは大きくなっていた。
でも――。
「着いたぞ。」
車が一つのお寺の前で止まった。
入江君は後部座席に置いていた花を持って、歩き始めた。
私もあとに続く。
『若森家之墓』と書かれた墓石の前では一人の女性が手を合わせていた。
「美咲さん…‼」
「あら、笑美子ちゃんに入江君。今年も来てくれたのね?」
「はい。」
私と美咲さんが話しこんでいる間に、入江君は花をお供えして、お線香に火をつけた。
「ん。」
火がついたお線香を私の前に差し出す。
「ありがとう。」
お線香を受け取って、私達も手を合わせ始めた。