執事と共に聖夜を。
キャビネットには、たくさんの譜面があった。

両親がいかに音楽好きだったかを表していた。


「ありました」


春樹が、そっと1冊の楽譜を渡してきた。

そう、『Happy Christmas――War is over』だ。

開いてみる。

そして、恵理夜は噴出してしまった。


「……駄目ね、読めないわ」


楽譜の上に、たくさんの書き込みがあったのだ。


「これは、歌った日付ですか」


二人の筆跡で、歌った日付や感想などがびっしりと書き込んであった。


“恵理夜が、初めてコーラスを歌ってくれた。最高に可愛い”


入院中に一緒に歌ったときの記録だろう。

全てが克明に記されていた。


「嬉しい……」


恵理夜は、ただそれだけを口にした。

その時、入り口から荒々しいノックが聞こえた。
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