執事と共に聖夜を。

――目的を果たした恵理夜は急いだ。


鍵を閉めるのももどかしく両親の部屋を出た。

時刻は23時50分をとっくに回っていた。

急がなければ一日が終わってしまう。


「あら?」


ピアノの音が、聞こえた。


「誰かしら」


この家でピアノを弾けるのは亡き母と自分だけだ。

シラヤナギも、嗜み程度には弾くがこんな音ではない。

だが、居間に入る前に途切れてしまった。


「春樹、」

「お帰りなさいませ、お嬢様」


居間から続くピアノの部屋では温かいココアが用意されていた。

春樹はピアノの前にいた。


「春樹が、弾いていたの?」

「いえ……それより、ココアを温め直しますか」


春樹は言葉を濁し、話をそらした。
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