新パラレルワールド参加作品=The shadows=天才浅海ユウと凡才月星大豆の奇跡的コラボ[企画]

 リュウが腕の時計に目をやった。


デュアルウォッチが二つの時を刻んでいる。


多分、この世界の時刻と、もと居た世界の時間。


「あのさ。今日はもう休んで、明日また話さない?」


 彼がニコリと笑い、黙ってモスグリーン色をした、枕程の塊を手渡してくる。


「これは?」


「シュラフ。寝袋だよ。テントはこっち」


 そう言って、彼はタープから続くテントへと入っていった。


外が透けて見えるメッシュとは違い、しっかりとした布で出来たテントは閉塞感を覚える。


そこで異性と2人きりという状況に戸惑う。


「どうした?」


 私を気遣ってテントから顔を出したリュウが、立ち尽くしている私に向かって微笑みかけた。


「大丈夫。この中は安全だよ?」


 まるで少年のように無邪気な瞳。


多分、自分が異性として恐れられているなんて、想像もしていないだろう。



< 54 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop