新パラレルワールド参加作品=The shadows=天才浅海ユウと凡才月星大豆の奇跡的コラボ[企画]
「私、夫から蹂躙されてたんです……精神的にも肉体的にも、まるで虫けらみたいに。
……初めて夫を拒んだ日から、外出制限と望まない行為を強要されるようになりました」
過去を吐き出す彼女の声はまたか細く、儚く俺の胸を締め付ける。
「その……何て言うか、彼の性的暴力が怖くて逆らえなかったの?」
記憶を辿るだけで怯えているような彼女を思い、俺は言葉を選びながら問いかけた。
「肉体的な苦痛よりも、私は精神的な脅迫に屈してしまいました」
「精神的に……それはどういったこと?」
「夫を拒んだ次の朝、私が独身の時から一緒に暮らしてきたリリが……犬が殺されたんです……」
桜色していた唇は紫に変わり、寒くもないのに震えている。
「そのリリが……皿の水に頭をつけたまま動かなくなってるのを見て、私は悲鳴を上げました。それを見た夫が笑って『逆らった罰だ』って……。
私、怖くて息が出来なくなって……そのまま失神してしまいました」
俺も任務のために長い時間を災害救助犬のブレイブ号と一緒に過ごした。
孤独な世界に在って、犬は家族であり、戦友だった。
ブレイブ号を失った時の喪失感は、昨日のことのように思い出される。
そんな家族同然の飼い犬を夫に殺された彼女の衝撃は、察して余りあるものだった。