新パラレルワールド参加作品=The shadows=天才浅海ユウと凡才月星大豆の奇跡的コラボ[企画]
「目が覚めたら私は病院のベッドの上でした。
診てくれた呼吸器系のお医者さんに、夫の仕打ちを訴えたら、精神科のお医者さんが来て警察を呼んでくれました。そこに夫が来て……」
普通なら逮捕まではいかなくても、事情聴取くらいはされるはずだ。
「その時、夫はリリを連れてたんです」
「え? その犬、死んだんじゃ……」
「多分、殺されたのはよく似た別の犬だったんでしょう。元気に走り回るリリを見せつけられて私、パニックになってしまって……」
恐怖の後に安堵を与え、また決定的な恐怖に突き落とす。洗脳の常套手段、それも絶望と絡めた高度な精神破壊だ。
「私、夫の証言で完全に妄想癖のある女に仕立て上げられてしまったんです」
俺はまるで絵空事を聞かされてるような気分で、ただ彼女を見詰めていることしか出来なかった。
「自宅に戻る車の中で、夫から『もう誰もお前の言うことなんか信じない』って言われました。
そして『今度逆らったら、本当にリリを殺す』って……」
その時のことを思い出したのか、彼女はガクガク身体を震わせながら話し続けた。